「外反母趾(ぼし)について」

 

外反母趾(ぼし)について
 獨協医科大学越谷病院整形外科教授 大関 覚


【外反母趾】は、親指の付け根(MP関節)の内側が突き出て、母趾が中央方向に傾いた変形です。 内側に突き出た部分は第1中足骨の骨頭で、外反母趾では骨頭と皮膚の間にある滑液包が、 しばしば炎症を起こして痛い腫(は)れたバニオンを形成します。 変形が進行すると、隣の第2趾の足底に痛いタコができて皮膚が硬くなり、 さらに進むと第2趾のMP関節が脱臼(きゅう)したり母趾が第2趾の下に潜り込んだりします。 立った状態でX線写真を撮ると、正面ではMP関節は3分の1ほど外側に外れた亜脱臼状態となり、 第1中足骨と第2中足骨は開大して角度が大きくなり、幅広の足になっています。 側面X線写真では足の縦アーチが減少し扁(へん)平足になっています。

【原因】はMP関節より先の母趾を外側に押しつける先細型の靴の影響が大きく、さらに女性は関節が軟らかいことも関与しているようです。

【予防】のためには母趾のMP関節内側が直線に近いカーブを描き、 中足骨部で足幅が拡がるのを押さえるようにデザインされた靴を選び、 趾(ゆび)先が窮屈な靴を履かないことが大事です。 ハイヒールやサンダルも中足骨部を支えるデザインのものを選ぶと良いでしょう。

【治療】には、軽度の変形では母趾を内側にストレッチして、MP関節の拘縮を取ることや、 足趾を広げるパーを練習して母趾外転筋を鍛えることが役に立つでしょう。 中足骨を足底から押し上げるメタタルザールパッドも痛みには劇的効果を示します。 重度の変形では中足骨を骨切りしてMP関節を整復する手術が必要になります。1週間の入院と約4週間の安静が必要です。