「肩の痛みについて」

 

肩の痛みについて 埼玉県立大学 保健医療福祉学部 坂田悍教


肩の痛みには、肩関節を動かすと痛みを生じる五十肩(肩関節周囲炎)と首すじ、首の付けね、肩または背中にかけての筋肉の痛み、こり、はりを主体とする“肩こり”とが代表的な肩の痛みです。“肩こり”には、頚部の神経や頚椎疾患、姿勢や仕事などによる肩や首の筋の異常緊張、高血圧・自律神経失調症などによる痛みがあります。
五十肩(肩関節周囲炎)の症状は、肩関節を動かした時の痛みが特徴で結髪・結帯動作や衣服を着替える時などに痛みがあります。また、就寝中、肩がズキズキと痛み、眼が覚めることもあります。動かした時に痛みがありますが、あまり動かさないでいると肩の動きが悪くなります(運動制限)。中年以降、特に50歳代に多くみられ、肩関節を構成する関節包、腱、靭帯、骨や軟骨が老化し、周囲に炎症を起こすことが主な原因とされています。肩の動きや圧痛などで診断しますが、腱や関節包、滑液嚢包の炎症のほかに腱の断裂、石灰沈着などがあり、レントゲン検査・MRIなどが必要な場合もあります。自然に治ることもありますが、放置すると痛みと運動制限で日常生活に支障をきたします。疼痛の強い急性期には安静、注射、消炎鎮痛剤の服用が勧められます。疼痛の軽減が得られると温熱療法(ホットパック・入浴)と運動療法としての棒体操、アイロン・滑車運動が行われます。指導を受けた正しい自宅での自主的な訓練も有用です。経過は、個々のケ-スで一定でなく長期化する場合もありますが、6ヶ月から1年程度で肩の痛みや運動制限は改善します。