「医者が患者になった時」

 

埼玉県医師会 健康手帳 医者が患者になった時
埼玉県整形外科医会 白石悟先生


●はじまり=11月29日(日)テニス中、後ろにさがった時に、すごい音がした。アキレス腱(けん)が見事に切れて、4センチの隙間があいていた。 もうじきスキーシーズン……。アーア!!

●対応=切れたのは厳然たる事実。仕方ない。入院。手術すると、長時間仕事を休み、皆に迷惑をかけるので、自分で治療することにした。 幸いにして、僕はアキレス腱の治療経験はかなり多い。20年以上前、欧州の学会に"僕のアキレス腱断裂手術法"の題で発表したこともある。 足を冷やして、高く上げ、弾性包帯で圧迫して3時間待った。おそるおそる開けてみたら、腫れも出血もなし。成功。

●経験から勉強=数日ごとにギプスを巻き変えていてわかったことは、①最小で有効なギプス②ギプスの足でお風呂に入る法 ③ギブスのまま履ける靴④松葉杖の上手な使い方。技術面以外で気がついたことは、医師白石と患者白石の思うこと、感じることは必ずしも同じでない。 医師白石にとっては、アキレス腱断裂は待てば治るもの。患者白石にとっては、初めての大ケガだから治らないかもしれないと不安。 ちなみに、手術しないでギプスで治療すると、傷跡も癒着もなしに治るもの。20年余過ぎた現在、何の問題もなく北アルプスを歩いている。

ケガをして、一つだけ良かったのは、"When a doctor becomes a patient"の題でスピーチコンテスト全国大会に出場し、トロフィーをもらったこと。 これまさにケガの功名。詳細は白石整形外科ホームページ(http://members3.jcom.home.ne.jp/s.satoru/)をどうぞ。

東京新聞「ショッパー」 2012年9月13日(木)発刊分