「変形性股関節症」

 

埼埼玉県医師会 健康手帳 変形性股関節症
 医療法人洋洲会 田中整形外科理事長 田中洋次郎先生


整形外科というと腰痛や膝(ひざ)関節痛を思い浮かべる方が多いと思いますが、それらに関連が深く、また、位置的にはその間にありながら意外と見逃されやすい疾患として変形性股関節(こかんせつ)症があります。変形性股関節症(以下・変股症)の原因としてわが国で多いのは、骨の形態に先天的あるいは後天的に異常があり、そのために変形が起きる二次性の変股症とよばれるものです。

症状としては、股関節の疼痛(とうつう)、可動域制限、歩行障害、日常生活動作(ADL)の障害などが出現します。初期には疼痛も股関節に限局することが少ないため、腰や膝関節に痛みがある方はそれらに気をとられ、股関節痛が隠れて見逃されやすいと考えられます。整形外科専門医はエックス線所見で変股症を①前期②初期③進行期④末期の4段階に分類し、それぞれに合った治療を行います。

治療法には大きく分けて①保存的療法②手術療法があり、①保存的療法がとしては、減量、安静、負荷の軽減、牽引(けんいん)、股関節周囲の筋力強化、薬物療法などがあります。②手術療法としてはa自分の骨を残す関節温存手術、b関節軟骨の再生をあきらめて関節機能の再建をはかる関節固定術や人工関節置換術があります。

先日も長い間、腰痛、坐骨(ざこつ)神経痛といわれ、整形外科専門医を受診するまで、痛みの原因がわからず一生治らないのではないかと悩まれていた方に、変股症の診断と、今後の治療方針をお話ししたところ「今まで胸につかえていたものがすっとした」と話をされていました。きちんとした診断が大切であると改めて感じた次第です。

東京新聞「ショッパー」 2011年7月21日掲載