子どもの膝痛(オスグッド病)
埼玉医科大学総合医療センター 整形外科教授 酒井 宏哉
オスグッド病は、小学校高学年から中学にかけての、 成長期の子どもの膝(ひざ)の痛みの原因の一つで、特に男子に多く見られます。 お皿(膝蓋骨=しつがいこつ)の下の骨(脛骨粗面=けいこつそめん)が次第に膨隆(ぼうりゅう)して、
その部分に痛みが生じてきます。 スポーツによる使いすぎ症候群(over use syndrome)として発症することが多い病気で、 休んでいると痛みはなくなりますが、スポーツを再開するとまた痛みが出ます。
スポーツで飛んだり跳ねたりしたり、ボールをけったりする動作は、 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋=だいたいしとうきん)の強い収縮を伴い、 その収縮力は膝蓋骨を介して脛骨粗面に伝わります。
この時期は骨が軟骨から急激に成長する時期にあたり、軟骨や骨が未熟なため、 このような動作を繰り返すことによって脛骨粗面に牽引力が働き続けると、
成長軟骨部が少しずつ剥離(はくり)してこの病気が発生します。 診断は脛骨粗面部の痛みと膨隆でほぼつきますが、X線撮影にてこれを確かめます。 この病気は成長期の一時的なものであり、身長の伸びが止まるのに従って、
ほとんどの場合痛みは消失しますが、脛骨粗面部の膨隆はもとの大きさに戻ることはありません。
痛みが強い時期には、程度に応じてスポーツを控えるようにします。 痛みをひどくさせないためには、大腿四頭筋を伸ばすストレッチを普段から十分に行い、
また運動の後には15~20分くらい痛いところを冷却(アイシング)します。 痛みが強い時には痛み止め(消炎鎮痛薬)を飲んだり、湿布をしたりするところもあり、
また痛みを和らげるためにベルトなどの装具を用いることもあります。