「先天性股関節脱臼 -気をつけたいこと-」

 

埼玉県医師会 健康手帳 先天性股関節脱臼 -気をつけたいこと-
中田病院 中田代助先生


乳幼児期に外傷や感染などの原因と関係なく起こる股関節脱臼を、先天性股関節脱臼といいます。原因は、現在では関節弛緩(緩み)と臼蓋形成不全(関節の受け皿の形成障害)に加えて、出世以後の習慣によって後天的に脱臼を起こすという説が有力です。

発生頻度は、以前は1%程度でしたが、その後の予防運動により急激に減少し、現在では約0.3%といわれ、女児に多く(男児の約5倍)みられます。

症状としては、開排(膝を立て、脚を外に開く動作)の制限、脚の長さの差、太ももの内側のしわの非対称、クリックサイン(股関節を開排したときに生じる小さな音を触知する)などが挙げられます。

治療は、リーメンビューゲルなどの装具療法が主体で、それでも整復されない場合は手術的に治療する場合もあります。早期に発見し治療すれば運動能力などの障害を防ぐことが可能ですが、発見が遅れると跛行(はこう)や股関節痛などを生じることがあります。

股関節脱臼の予防で気をつけたいことは、①従来から言われているオムツのあてかたです。股関節の屈曲(前に曲げる動作)を妨げないようにしましょう。②先天性股関節脱臼は、秋から冬生まれのお子さんのリスクが高いとも言われています。過度の厚着などで下肢の動きを妨げないようにしましょう。 ③向き癖があると、その反対側(向き癖が右であれば左側)の股関節の開排制限が生じやすいといわれていますので注意しましょう。

また年長児の場合、脱臼があっても歩行は可能となってしまいます。歩けているからと言っても、歩き方に不自然な点があれば専門医に相談してください。

東京新聞「ショッパー」 2012年9月20日(木)発刊分