「スポーツと膝の靭帯損傷」

 

埼玉県医師会 健康手帳 スポーツと膝の靭帯損傷
 医療法人幹誠会 川久保整形外科クリニック院長 川久保 誠先生


 膝(ひざ)関節の靭帯(じんたい)は、内・外側側副靭帯と前・後ろ十字靱帯の4本があり、膝の動きを制御する重要な器官です。膝の靭帯損傷はスポーツ中に多く発生し、サッカーやバスケットボールなどでは相手選手と接触していないで起こること(非接触型損傷)が多くみられます。一方、アメフトやラグビーなどでは相手と接触して起こること(接触型損傷)もあります。

 通常、内側側副靭帯は、膝が内側に入るように強制されると損傷し、前十字靱帯はジャンプの着地などで膝をねじり膝崩れした時に損傷されます。症状は疼痛(疼痛)と腫(は)れそして可動域制限です。内側側副靭帯損傷では膝の内側に痛みがありますが、前十字靱帯の単独損傷では関節全体に痛みを訴えます。膝の腫れの多くは、関節に血がたまることで生じます。時間とともに膝が腫れる場合は前十字靱帯損傷が疑われます。

 膝をけがした場合は局所を冷やし、なるべく動かさないようにして整形外科を受診しましょう。診断は専門医による徒手検査で明らかとなりますが、損傷の程度や合併損傷を明らかにする目的でMRIの検査も行われます。治療は損傷した人体により異なります。側副靭帯損傷は治りやすく装具やサポータによる保存的治療が行われますが、前十字靱帯損傷は治りにくく、手術治療が選択されます(関節鏡視下人体再建術/靭帯の移植手術)。

 スポーツの復帰にはリハビリも重要です。最近では靭帯損傷を起こさないための予防が重要視されています。スポーツを行っている方は、普段から靭帯損傷を起こさないような体作りをする必要があります。

東京新聞「ショッパー」 2011年7月14日掲載