「膝蓋骨脱臼」

 

埼玉県医師会 健康手帳 「膝蓋骨脱臼」
 埼玉社会保険病院整形外科部長  児玉 隆夫先生


 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)では、膝(ひざ)のお皿(膝蓋骨)がほとんどの場合外側に脱臼します。初めての脱臼では、関節の痛みや腫れが生じます。これがクセになり、何度も繰り返し脱臼する(反復性膝蓋骨脱臼)ようになると、痛みや腫れよりも膝の不安定感を強く訴えるように なります。

 スポーツで踏んばったりジャンプした時に脱臼が起きます。外れた膝蓋骨は自然に整復されることも珍しくありません。また脱臼の拍子に、関節の一部が骨折することもあります。

 初回の脱臼は10代の女性に多く、その半分近くが反復性脱臼になります。関節の緩みや、骨の形状の異常などの生まれつきの素因が関与することが多くみられます。

 初回の脱臼で骨折のない場合は、整復後外固定で治療を行うことが一般的ですが、反復性脱臼や、初めての脱臼でも素因が明らかで反復脱臼に移行する可能性が高い場合、あるいは骨片を伴っている場合には、手術治療が行われます。最近ではMPFL(内側膝蓋大腿靭帯=だいたいじんたい)の再建術が行われることが多く、従来の方法より良い成績を収めています。治療方針は年齢や病態により違いますので、担当医とよく相談のうえ決めることが大切です。