人工膝関節について
埼玉社会保険病院整形外科部長 児玉 隆夫先生
肥満やO脚の高齢女性は、膝(ひざ)にかかる負担が大きく、変形性関節症になりやすいとされています。注射や薬で効果が得られないときには手術を行います。人工膝関節置換術は、軟骨の摩耗などによって痛んだ骨の表面を除去し、金属やポリエチレンなどで置き換える手術のことです。リウマチで関節が壊れてしまった場合にも効果的な方法です。
骨同士の接触を防ぐことで、歩く時の痛みがなくなり、膝の屈伸もスムーズになります。O脚も矯正できるので、歩行が安定し、階段の上り下りも楽になります。
人工膝関節の手術は、以前は15~20センチも切開していましたが、最近では10センチ程度で済むようなMIS(最少侵襲手術)と呼ばれる方法が盛んに行われるようになりました。手術の時に筋肉に与えるダメージが少なく、術後の回復が早いのが特徴です。手術時間は1時間半程度で、静脈血栓塞(そく)栓症等の合併症を防ぐためにもすぐにリハビリを始めます。入院期間は3、4週間で費用は保険証があれば役15万円ほどです。
病院を選ぶポイントは、一定程度の手術件数があり、膝の専門医がいること。現在通院中の開業医さんに紹介してもらったり、手術経験者に聞いたりするのもいいと思われます。
現在の人工関節は以前のものより長持ちするようになりました。19年持つ確率が95%, 20年なら80%前後と言われています。長持ちさせるためには過酷な使用を避け、自分自身の骨を丈夫に保つことが大切です。また人工関節は感染に弱いので、糖尿病や虫歯、歯周病はきちんと管理し治療しましょう。